男女が結婚する際、現在の日本では夫の方の苗字を選択している割合が全体の9割以上を占めており、妻の方の苗字を選択して結婚される方はごくわずかです。
ちなみに現在、夫婦での同姓が全国民の義務となっているのは、世界を見渡しても日本だけです。以前は他にも夫婦同姓を義務付けていた国がいくつかあったのですが、それも徐々に緩和され、2014年にトルコで夫婦別姓を認める法改正があったことにより、ついに日本のみになってしまいました。
そして、そんな日本では結婚の際必ず夫か妻どちらかの苗字を選ばなければならないわけですが、
もしかすると結婚後に、結婚した際に決めた苗字を、何らかの理由で変更したいという方もいるかもしれません。
そこで今回の記事では、実際にその苗字を変更する方法について解説いたします。
夫婦になってから苗字を変更する方法について
夫婦になってから苗字を変更する場合というのは、例えば
「夫の苗字を夫婦の苗字と決めたものの、妻の旧姓に変更したい」
という場合などが考えられますが、
この苗字を変更する方法は主に2つあります。
まず、その1つ目の方法として挙げられるのが、
夫が妻の親と「養子縁組」をする方法です。
養子縁組とは、法律的に実の子供と同じ権利を持つための制度であり、たとえ養親に2人実の子供がいたとしても、その養子になると他の2人と変わらない権利を持つことになります。
そしてこの際、養子縁組を行った人物は、原則としてその養親の苗字に改めることになっています。(民法810条)そのため、例えば夫が妻の親の養子になった場合、夫の苗字は妻の親のもの(つまり妻の旧姓)となり、夫の苗字が変わると、妻の苗字もやはりその旧姓に戻ることになります。
そして、もう1つの方法として挙げられるのが、
夫婦が一度離婚し、もう一度再婚する際に妻の姓を選ぶ方法です。
これは非常にわかりやすい方法だと思いますが、
例えば夫婦で夫の苗字を名乗っていた場合、離婚する際に妻は原則として旧姓に戻ることになっています。
そのため、その後再び再婚する際に、今度は妻の方の苗字を選ぶことで、夫婦そろって妻の方の苗字になることが出来ます。
わざわざ養子縁組までする必要はないという場合には、こちらの方が簡単でわかりやすい方法です。
ちなみに養子縁組という方法以外では、婚姻関係を結んだ状態で苗字を変更する方法はありません。
結婚、離婚の際の「戸籍」について
結婚や離婚をした際に苗字がどう変わるのかというのは、当人が属している戸籍の情報が密接に関係しています。
戸籍とは
「夫婦や親子の関係を公的に証明するために作成される公文書」
のことを言い、
日本の国民であれば、誰もが原則として戸籍にもともと入っています。(出生届を出した時点で親の戸籍に入ります。)
しかし、もしも男女が結婚する際には、その男女両方が親の戸籍から独立し、新たな戸籍が作られます。
そしてこの際に夫の苗字を夫婦の姓として選択された場合には、夫がその戸籍の筆頭者となり、妻はその戸籍に入ることになります。筆頭者とはその戸籍の代表者のことであり、一番最初に名前が来る人物です。
ではその後、もし夫婦が離婚されたらどうなるのかというと…
この場合は、筆頭者である夫はそのままその戸籍に残り、妻は以前の親の戸籍に戻ることになります。
そのため、原則として妻は旧姓に戻ることになるのです。
そしてその後もしその元夫と元妻が再び再婚し、今度は妻の方の苗字を選択される場合には、
婚姻届けを提出する際に、今度は妻の方を筆頭者とする戸籍が作られ、そこに夫が入ることになります。
このように、夫婦の苗字がどうなるのかというのは、戸籍の筆頭者を変更するということに他なりません。
ただ、現在の制度では婚姻関係を結んでいる状態でその筆頭者を変更するという手続きがないため、変更するには一度婚姻関係を解消する必要があるのです。
同じ人と再婚する場合「待婚期間」は必要ありません
ご存知の方も多いかと思いますが、女性の場合は一度離婚すると、次に再婚するまでに一定の期間を設けなければならないということが法律によって定められています。
詳しくは、民法第733条「再婚禁止期間」をご参照ください
ちなみにこの再婚禁止期間は、以前は300日とされてたのですが、平成28年に法律が改正されて現在は100日に短縮されました。
しかしそれでもなお待婚期間が設けられていることには変わりないのですが、
実はこの733条は、同じ人同士で再婚される場合には適用外となるため、100日を待つ必要もなくすぐに再婚の手続きを進めることが出来ます。
というのもこの法律は本来、離婚後すぐに別の人物と再婚した場合に、新たに生まれた子供が前の夫の子供なのか、今の夫の子供なのか、という問題になるのを防ぐために存在するものであるため、そういった問題が起きようがない同じ人物との再婚には適用されないのです。
そのため、もしも夫婦の苗字を変更したいという理由での離婚、および再婚であれば、時間をかけずにすぐに手続きを進めることが可能です。
もしもどうしても苗字を変更したい理由がある方は、是非上記の内容などを踏まえ、各自治体の方にもご相談のうえで手続きなさってください。