住民税とは、ある程度の収入がある方であれば、必ず支払わなければならない税金の1つです。
住民税は、各自お住まいになっている都道府県と市区町村に対して支払う地方税であり、
「所得割」と「均等割」の2つから成り立ちます。
また、所得割と均等割の両方の中で、それぞれ都道府県民税と市区町村民税に分かれています。
住民税 | |
所得割 | 均等割 |
前年の1月1日~12月31日の個人所得に対して課税される金額であり、市町村民税6%と都道府県民税4%の併せて10%から成り立ちます。 | 一律負担であり、各自治体によって金額が異なります。(例:市民税3500円、県民税1500円の合わせて5000円など) |
このうち、均等割の方は一律負担で金額が定められていますので、特に難しいところはないのですが、
所得割の方は、計算によって求められるものですので、それがどのような計算によって求められているのか知っておくことは大切です。
そして更に、その住民税の所得割を求める際に重要になってくるのが、今回お話しする調整控除と呼ばれるものです。
この調整控除が住民税の所得割の計算にどうかかわってくるのか、今回の記事でわかりやすく解説いたします。
住民税の所得割の計算方法とは?
所得割の説明の前に、もう少しだけ均等割について補足させていただきますが、
所得税の均等割については、大体どの地域でも現在は5,000円程度に設定されています。
例えば東京都の場合、以下のような金額に設定されています。
- 「都道府県民税」の均等割は1,000円(平成26~平成35の間は1,500円)
- 「市区町村民税」の均等割は3,000円(平成26~平成35の間は3,500円)
なお、平成26年〜35年までの間は、復興特別住民税が加算されるため1,500円と3,500円となっています。
そして、この均等割の5,000円に、計算で求めた所得割の金額を足したものが支払うべき住民税の金額です。
住民税の所得割は以下の計算式によって求めることが出来ます。
[aside type=”boader”]
個人事業主の場合
- 収入 − 経費 =所得
- 所得 − 所得控除=課税所得
- 課税所得 × 10% − 税額控除=所得割
会社員の場合
- 給与収入 − 給与所得控除 =給与所得
- 給与所得 − 所得控除=課税所得
- 課税所得 × 10% − 税額控除=所得割
[/aside]
個人事業主の場合には経費という考え方がありますが、会社員の場合にはその経費の代わりに給与所得控除と呼ばれる控除が最初にひかれます。
また、この式の中で最後にひかれる税額控除と呼ばれる部分に調整控除も含まれます。
ちなみに、所得控除と税額控除の種類として主に以下のようなものが挙げられます。
所得控除
- 雑損控除
- 医療費控除
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 青色申告特別控除
- 生命保険料控除
- 損害保険料控除
- 地震保険料控除
- 寄付金控除
- 寡婦・寡婦控除
- 勤労学生控除
- 障害者控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 基礎控除
税額控除
- 調整控除(住民税のみ)
- 配当控除
- 外国税額控除
- 寄附金税額控除
- 配当割額及び株式譲渡所得割額の控除
- 住宅借入金等特別税額控除(住宅ローン控除)
以上を踏まえたうえで、今回は個人事業主の住民税の所得割をわかりやすく計算してみます。
個人事業主の住民税の所得割
それでは、実際に個人事業主の場合の住民税の所得割について計算してみたいと思います。
※30代男性の1人暮らしで、収入が400万円、経費100万円、扶養者はなしと仮定します。
※基礎控除33万円、青色申告特別控除65万円を適用させ、社会保険料控除は約44万円で計算しています。
※社会保険料控除は個人事業主の場合、国民健康保険、国民年金等による控除です。(実際に支払った額が控除額)
※この男性の場合、税額控除として調整控除のみ適用されると仮定します。
[aside type=”boader”]
- 収入 − 経費 =所得
400万円-100万円=300万円 - 所得 − 所得控除=課税所得
300万円-基礎控除33万円-青色申告特別控除65万円-社会保険料控除44万円=158万円 - 課税所得 × 10% − 税額控除=所得割
158万円 × 10%-調整控除=??円
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ここまでくれば、あとは調整控除額を計算するだけで住民税の所得割が算出されます。
調整控除とは?
調整控除とは、住民税と所得税とでは人的控除の額に差があるため、その差分を調整するために計算される控除額のことを言います。
今回のケースでは所得控除として
- 基礎控除33万円
- 青色申告特別控除65万円
- 社会保険料控除44万円
を所得から差し引きましたが、このうち基礎控除額はまさに人的控除の1つであり、
人的控除と呼ばれるものとしては主に以下のようなものが挙げられます。
- 基礎控除
- 扶養控除
- 配偶者控除
- 寡婦控除
- 寡夫控除
- 勤労学生控除
- 配偶者特別控除障害者控除
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つまり人的控除とは、数ある所得控除のうち、
扶養親族の有無、配偶者の有無等によって適用されうる人的な控除額のことを言います。
基礎控除は誰でも無条件に適用される控除額ですが、代表的な人的控除です。
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ただしこの人的控除は、所得税と住民税の所得割の両方で適用されるものの、住民税の方がほとんどの場合控除額が少ないという特徴があります。
「所得税」と「住民税の所得割」はほぼ同様の計算の仕方によって求められますが、つまり住民税の所得割の方が控除額が少なくなるのです。
そのため、その2つを調整する意味で計算され、住民税の所得割の計算にのみ適用されるものが調整控除です。
なお、住民税の所得割と所得税における人的控除の額はそれぞれ以下のようになります。(年度によって変化する可能性あり)
基礎控除の額を見て頂ければわかりますが、住民税の方が控除額が5万円程少ないですよね。
区分 | 住民税 | 所得税 | |
基礎控除 | 330,000円 | 380,000円 | |
扶養控除 | 一般 | 330,000円 | 380,000円 |
特定 | 450,000円 | 630,000円 | |
老人 | 380,000円 | 480,000円 | |
同居老親 | 450,000円 | 580,000円 | |
配偶者控除 | 一般 | 330,000円 | 380,000円 |
老人 | 380,000円 | 480,000円 | |
障害者控除 | 普通 | 260,000円 | 270,000円 |
特別 | 300,000円 | 400,000円 | |
同居特別 | 530,000円 | 750,000円 | |
寡婦控除 | 一般 | 260,000円 | 270,000円 |
特別 | 300,000円 | 350,000円 | |
寡夫控除 | 260,000円 | 270,000円 | |
勤労学生控除 | 260,000円 | 270,000円 | |
配偶者特別控除 | 38万円超 40万円未満 | 330,000円 | 380,000円 |
40万円以上45万円未満 | 330,000円 | 360,000円 | |
45万円以上50万円未満 | 310,000円 | 310,000円 | |
50万円以上55万円未満 | 260,000円 | 260,000円 | |
55万円以上60万円未満 | 210,000円 | 210,000円 | |
60万円以上65万円未満 | 160,000円 | 160,000円 | |
65万円以上70万円未満 | 110,000円 | 110,000円 | |
70万円以上75万円未満 | 60,000円 | 60,000円 | |
75万円以上76万円未満 | 30,000円 | 30,000円 |
調整控除の計算方法
それでは次に、実際に調整控除を計算してみましょう。
調整控除の計算方法は、合計課税所得金額が200万円以下になるか、200万円以上になるかによって以下のように異なります。
[aside type=”boader”]合計課税所得金額が200万円以下の場合
合計所得金額が200万円以下の場合、次の1,2のいずれか少ない金額の5%が調整控除額となります。
- 人的控除額の差額の合計金額
- 合計所得金額
[/aside]
[aside type=”boader”]合計課税所得金額が200万円を超える場合
【人的控除額の差額の合計金額-(合計課税所得金額-200万円)】×5%
ただし、計算結果が2,500円未満のときは、2,500円。
[/aside]
そして今回の場合、合計課税所得金額は158万円ですので、200万円以下の場合に該当します。
また、人的控除額の差額は基礎控除における差額の5万円(38万円-33万円)のみであるため、
こちらの5%である2500円が調整控除額となります。
そのため、改めて住民税の所得割を計算すると以下のようになります。
[aside type=”boader”]
- 収入 − 経費 =所得
400万円-100万円=300万円 - 所得 − 所得控除=課税所得
300万円-基礎控除33万円-青色申告特別控除65万円-社会保険料控除44万円=158万円 - 課税所得 × 10% − 税額控除=所得割
158万円 × 10%-調整控除2500円=15,5500円
[/aside]
また、ここに均等割の5,000円を加えた金額が住民税の全額となりますので、
最終的に支払う住民税(所得割+均等割)は160,500円となります。
最後に
今回の記事では、住民税の調整控除とは何なのか、その計算方法についてわかりやすく解説いたしました。
ちなみに、もしも仮に今回の男性に「配偶者」と「働いていない子供」がいる場合、
人的控除として、基礎控除(33万円)に加えて配偶者控除(基本33万円)と扶養控除(基本33万円)も差し引くことが出来ます。
なお、この3つの控除の差額はそれぞれ5万円ですので、差額合計は15万円となります。
そうすると、住民税の所得割を求める計算結果は以下のようになります。
- 収入 − 経費 =所得
400万円-100万円=300万円 - 所得 − 所得控除=課税所得
300万円-基礎控除33万円-配偶者控除33万円-扶養控除33万円-青色申告特別控除65万円-社会保険料控除44万円=92万円 - 課税所得 × 10% − 税額控除=所得割
92万円 × 10%-調整控除7500円(差額合計15万円(<92万円)の5%)=84,500円
これに均等割を足した89,500円が住民税の全額となりますが、
先ほどの160,500円と比較すると、最終的に住民税が71,000円も安くなっていることが分かります。
そのため、いかに控除を活用できるかということが節税につながりますので、絶対に控除のし忘れが無いようにお気をつけください。
それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました(^^)