何らかの事情があり、
「夫婦で戸籍を別にすることは可能なのか?」
とふと疑問に思われるようなこともあるかもしれませんが、
法律上夫婦となっている2人は、原則として同じ戸籍に入ることになっており、別の戸籍に入ることはできません。
もしも夫婦で別の戸籍にいるためには、法律婚ではなく事実婚というかたちをとるしかありません。
では、そもそも夫婦の場合の戸籍の情報はいったいどうなっているのか、
皆さんが気になるであろうポイントについてまとめていきたいと思います。
そもそも戸籍とは?
まず、そもそも戸籍とは何かというところから解説いたしますが、
戸籍とは「夫婦や親子の関係を公的に証明するための文書」のことを言い、
原則として、夫婦とその子供という親子二代の情報から成り立っています。
つまり、祖父母、子夫婦、孫という三世代が同一戸籍に入っているということはあり得ません。
新しく生まれた子供は、出生届の受理によって親夫婦の戸籍に入ることになり、
その子供が成長し、また新たに第三者と婚姻関係を結ぶことになると、
その男女は親の戸籍から独立し、新たに夫婦としての新戸籍に入ることになります。
また、その新戸籍に入る際には夫婦のどちらかを筆頭者(戸籍の代表者)にする必要があり、
その筆頭者の姓が、夫婦としての姓になります。
そのため、通常は夫の方が筆頭者になることが多く、現実として日本人夫婦の約9割が夫が筆頭者となっています。
離婚すると戸籍はどうなるのか?
法律上の婚姻関係を結んでいる場合、夫婦で戸籍が別になるということはあり得ませんが、
離婚届を提出し、これが受理されると、夫婦であった者は別々の戸籍に属することになります。
具体的には、筆頭者となっている者はそのまま夫婦としての戸籍に残ることになり、筆頭者ではない方の者は結婚する前の戸籍(つまり親の戸籍)に戻ることになります。
そのため、通常妻であった者が親の戸籍に戻ることが多く、この場合妻はもともとの姓に戻ります。
ちなみに、離婚後も夫婦としての姓を名乗ることは可能であり、
これを「婚氏続称」と言いますが、
この制度はあくまで社会生活上の不便を防ぐための制度で、呼称上の氏として離婚時の姓を名乗ることを認可するという制度でしかありません。
そのため、実は婚氏続称の手続きをしても、離婚後に親の戸籍に戻ることには変わりはありませんし、民法上の氏(姓)は結婚前のものに戻っていることになっています。
[aside type=”yellow”]※具体例
例えば、鈴木幸子さんと渡辺太郎さんが結婚し、その際に渡辺太郎さんを筆頭者とする戸籍に夫婦が入っていたと仮定します。
そしてその後夫婦は離婚し、妻が婚氏続称の手続きをとった場合、
その民法上の氏と呼称上の氏は以下のように変化します。
●鈴木幸子さんの民法上の氏と呼称上の氏の変化
結婚前 | 結婚後 | 離婚後 | |||
民法上の氏 | 呼称上の氏 | 民法上の氏 | 呼称上の氏 | 民法上の氏 | 呼称上の氏 |
鈴木 | 鈴木 | 渡辺 | 渡辺 | 鈴木 | 渡辺 |
婚氏続称のためには、離婚から3ヶ月以内に「離婚の際に称していた氏を称する届」を担当の役所・役場に届け出る必要があります。[/aside]
離婚後の子供の戸籍について
もしも夫婦が離婚した際に、その間に子供がいる場合、
離婚の際には、どちらがその子供の親権者かというのには関係なく、子供はそのままの戸籍に残ることになっています。
つまり夫が筆頭者であった場合には、たとえ妻が親権を持っていても、子供は夫を筆頭者とする戸籍に残ったままになってしまうのです。
そのため、妻と同じ戸籍に入れるためには、その異動のための手続きを行うことになるのですが、
離婚と同時に妻が親の戸籍に入ってしまうと、親子三世代で同一戸籍というのは不可なので、子供は妻と同じ戸籍に入ることが出来ません。
そのためこのような場合には、妻は親の戸籍には戻らず、新たに妻を筆頭者とする新戸籍を作り、そこに子供を入れることになります。
ちなみに、妻は離婚をした時点で旧姓に戻るため、妻を筆頭者とする戸籍に入る際には、子供も妻の旧姓に変わることになります。
まとめ
今回の記事では、夫婦であるものが戸籍を別にすることは可能なのかどうかということについて詳しくまとめました。
結論として、婚姻届けを提出し、法律上夫婦として認められている場合には、その2人が別の戸籍にいるということはできません。
仮に、もしも夫婦のどちらか、例えば夫が第三者と養子縁組を行った場合には、
夫は養親の戸籍に入ることになりますが、その際にはやはり妻の方も養親の戸籍に入ります(随従入籍)
このように、原則として夫婦は必ず同じ戸籍に属し、同じ姓を名乗ることになっているのです。