【解説】日本の三世代家族は本当に減少してしまったのか?

少子高齢化問題が囁かれ始めてから随分と時間が経ちましたが、

実際、日本における合計特殊出生率(1人の女性が生む子供の平均値)はこの半世紀で随分と低下しました。

現在ご高齢の方々の年代では、兄弟が5人以上いた家庭も珍しくはありませんでしたが、

1940年代には4を超えていた合計特殊出生率は、今ではわずか1.4程度です。

出典:内閣府

また、最近ではご高齢の方々の孤独死も問題視されていますので、

そういった背景から、日本人のライフスタイルは変化し、親と子が同居をする家庭も減り、

いわゆる「三世代家族」は減少してしまったかのような印象が根付いています。

しかし、この三世代家族の減少は、実は同居率が減った結果起こっているものではありません。

そこで今回の記事では、その三世代家族と同居率の関係について詳しく解説いたします。

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目次

日本における三世代家族の減少について

三世代家族とは、

  • 祖父母世代
  • 子世代
  • 孫世代

という三つの世代の人々が同居している家族のことを言い、

日本では以前、この家族形態が今よりも一般的でした。

しかし現在では、高齢者の一人暮らしが増え、祖父母と孫が触れ合う機会が減り、

世間一般的なイメージとして、三世代家族は段々と減少しているかのように感じられます。

しかし、これに対して一石を投じる形となったのが、

同居率減少という誤解」という、東京大学と日本大学の共同で書かれた論文であり、

実はこの数十年間で、三世代での同居率が劇的に減少したという事実はなかったのです。

しかし、三世代家族の世帯数自体は、やはり全体として減少している傾向にあることは確かです。

これはいったいどういうことなのでしょうか。

原因の1つは、子供がいない高齢者の増加

この記事の冒頭で、合計特殊出生率の変化について触れましたが、

これはあくまで平均値ですので、例えば合計特殊出生率が2人の場合、

4人生む方もいれば、1人も生まない方もいます。

そしてこの数十年間で、その子供を1人も生まないというチャイルドレスの方は増加傾向にあり、

これが、三世代家族全体の数の減少に関係しているのです。

すなわち、子供がいないと、もちろん孫もいませんから、三世代家族という家族形態は全体としては減少していきます。

では、子供がいる家庭ではどうなのかというと、

実は、今現在ご高齢の方において、子供や孫がいるご家庭においては、同居率の劇的な減少というものは起こっていません。

そのため、三世代家族の減少というものは、子世代と祖父母世代での同居を望まない家庭が増加したから起こったものではなく、

その主な原因は、子供がいない高齢者の増加にあるということになります。

先ほどご紹介した論文では、まさにその部分について触れられています。

高齢者世帯におけるチャイルドレスの割合は、2001年から2010年の間に7.9%から15.7%へと8%ポイント増加した。2010年時点でチャイルドレス世帯数は約300万世帯、うち独身チャイルドレス高齢者数は約145万人と推計される。一方で子供のいる高齢者における子との同別居状況(同居率)は、この期間でほとんど変化していなかった。

引用元: 同居率減少という誤解

すなわち、三世帯家族全体の数の減少は、

まさに少子高齢化問題が引き起こしているものであることが分かります。

少子高齢化は、医療の発達によって高齢者が増え、女性が生む子供の数が減少しているために起こっているものである

というイメージは確かに正しいのですが、

実はそもそも、子供を生まないという選択肢をとる女性が増加しているため、三世代家族という形態は減らざるを得ないのです。

そのため、高齢者の孤独死という問題を耳にすると、

何故亡くなった方は一人で暮らしていたんだろか、子供は何をしていたんだろうか、

と考えてしまいますが、

その中には、そもそも子供がいないという方も含まれているのですね。

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2017年の出生数は過去最少に

三世代での同居率自体の変化はそれほど起こっていませんが、

日本における出生数自体は年々減少し、

1947年に260万人を超えていた年間の出生数は、ついに100万人以下となってしまいました。

昨年2017年の出生数は94万6060人で過去最少でした。

年間の出生数がこの約半世紀で半分以下になってしまったわけですから、いかに子供が減少し、子供を生まない方が増えているのかということがよくわかりますよね。

しかし逆に、この半世紀で、日本人の平均寿命は男女ともに約20~25年も延びました。

出典:内閣府

こういった数値を見ると、確かに少子高齢化が起きてしまうということもよくわかりますよね。

医療が発達し、寿命が延びることは喜ばしいことですが、

それだけ、日本の働き手の割合は少なくなるということになりますので、

そういった問題を解決する具体的な方法を、日本全体として考えていかなければなりません。

まとめ

今回の記事では、日本における三世代家族の減少の原因とは何なのかということについて詳しく解説いたしました。

まとめると、少子高齢化によって確かに三世代家族は減少傾向にありますが、

子供がいるご家庭においては、三世代での同居が減っているわけではなく、

全体として子供がいないという方が増加しているため、その三世代世帯の数は減少してしまっているのです。

そのため、もちろん以前ほど同居が当たり前ではなくなっているのは確かですが、

決して日本の生き方としての三世代同居が減ってしまったわけではないようです。

それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました(^^)

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